ミヨカワ将作品の書評/レビュー

ST&RS─スターズ─ (5)

旅立つためのエネルギー
評価:☆☆☆☆★
 火星往還船R・ゴダード号で会談場所へとやって来た白舟真帆、宙地航、御闇いづみの子供たちは、会談相手である宇宙人ペロプニャンと出会う。そのペロプニャンに誘われ、ベテルギウスで助けを求めている星の生命体スターズに会いに行くため、真帆たちの持つ力を結集して、宇宙へと飛び出した。
 そしてたどり着いたベテルギウスは、超新星爆発寸前の状況。そんな中で、いづみに聞こえる悲鳴を追った先にいたのは、ベテルギウスから生まれた小さな子供だった。

 いよいよ最終巻。ペロプニャンが開いた宇宙への扉の先に待ち受ける未来とは…。おまけとして、フィフィー・コリンズと姉のティティー・コリンズが宇宙からのメッセージを受信した時のエピソードを収録している。また、読切として掲載された本作の原型も収録。

ST&RS─スターズ─ (4)

ノリの軽いファーストコンタクト
評価:☆☆☆☆★
 宇宙人との火星における会談が迫り、星原めぐる、マルカ・ニコラエヴナ・マイゼーラ、ユリア・イヴァノヴナ・マイセーラらの見送る中、白舟真帆、宙地航、御闇いづみの3人の子どもたちは、フィフィー・コリンズに率いられ、国際宇宙ステーションの火星往還船R・ゴダード号を目指す。
 R・ゴダード号の船長である宇洲原慶一郎と合流し、約四十日の工程をかけて到着した火星には、完成した会談場所と、ペロプニャンと名乗る会談相手が待っていた。

 光が重要な役割を果たす展開になってから、キラキラ描写が多くなって来た。ちょっとキラキラし過ぎて、画面が白くなり過ぎな気もする。
 また、フィフィーがメインヒロインを食いちぎり、言動の低年齢化を果たして、ヒロインの座についてしまった気がしなくもない。このあたりは、目標ターゲットと販売層のギャップなのかも。

 読切「FOO FIGHTER FUJI」を収録。ボーイ・ミーツ・宇宙人の物語だ。

ST&RS─スターズ─ (3)

特別は異質
評価:☆☆☆☆★
 月面にあるロボットの遠隔操作や地底湖ロングウォークなど、閉鎖環境における二週間の厳しい試験を潜り抜け、白舟真帆、星原めぐる、宙地航の三人は、晴れてST&RS宇宙学校の宇宙飛行士候補生となることが出来た。
 しかし入学式には見慣れない新入生も何人かいる。彼らが受験した試験以外にも、推薦入学という入学のためのルートがあったのだ。推薦入学生の一人である御闇いづみは、フィフィー・コリンズ校長が受信した宇宙人からのメッセージを解読するプロジェクトにいた天才少女らしい。

 そしていづみも、宇宙人からのメッセージを直接受け取ったという真帆に対して興味を抱く。運よく、めぐるも含めて一緒のチームになった3人は交流を深めて行こうとするのだが、不用意な一言が他者の無用な関心や嫉妬を生むことになり、3人をそれぞれのかたちで追い詰めていく。
 描線やキャラクターの言動など、様々なところに試行錯誤の跡が見受けられる第三巻。何とか踏ん張って欲しいところ。

ST&RS─スターズ─ (2)

友人かライバルか
評価:☆☆☆☆★
 白舟真帆、星原めぐる、宙地航の3人は、宇宙学校日本校の試験に臨んでいた。二週間の閉鎖環境における選抜試験は、これまでのチーム戦から一転、地底湖を宇宙服で踏破するロングウォークの個人戦になった。それでも3人は、チームでロングウォークに出発する。
 順調に行程を進む真帆たちだったが、チームメイトから見捨てられた土神颯太を仲間にしたあたりで、宙地の身に異変が生じる。迫られるリタイアの選択に、真帆たちの下す決断は…?

 選抜試験から宇宙学校入学後の新たな出会い、真帆と同じメッセージを受け取った少女、御闇いづみとの出会いが描かれる。
 また、優等生の宙地航が宇宙飛行士を目指すことになったエピソードなど、キャラクター像も深められていく。次巻はめぐるだね。

ST&RS─スターズ─ (1)

異星人からのメッセージ
評価:☆☆☆☆★
 2019年、人類は遥か宇宙の彼方からのメッセージを受け取った。それは「2035年に火星で会おう」というもの。その会合を実現するため、人類は国家の枠を超え、火星に人類を送り込むための組織・ST&RSを立ち上げた。
 そして2033年、約束の日を二年後に控え、メッセージの年に生まれた少年少女が宇宙を目指し、宇宙飛行士を養成するための宇宙学校に入学する。

 メッセージが届いた日、生まれて初めてしゃべった言葉が「火星」だという少年・白舟真帆も、宇宙学校を目指すひとりだ。幼なじみの星原めぐる、そして転校生の宙地渡と共に、宇宙学校日本校の選抜試験に臨む。
 日本校の校長は、メッセージの発見者であるフィフィー・コリンズだ。彼女はあらゆるところに宇宙飛行士としての資質を試す問題を仕込み、そして実践的な課題を課す。合格率わずか1%未満の難関に、彼らは合格することが出来るのか?

 というわけで珍しく宇宙もの。宇宙学校の生徒を描いた漫画としては「ふたつのスピカ」が挙げられると思うが、あれとは少し違う。あちらは日本国産ロケットによる宇宙開発という部分にこだわりがあったが、こちらは国家の枠を超えたプロジェクトなのだ。その分、現実には達成困難な、理想的なプロジェクトでありすぎるきらいはあるが、しかし夢はでかい。
 そして今巻では、真帆たちが、宇宙で必要とされる資質を試される、通常の試験にしては奇抜な、しかし宇宙で実際に必要とされる試験を課されることになる。

 この試験のプロセスは、ストーリー展開上、若干、ご都合主義なところもある。例えば、最初の試験で真帆が作業者でなければ、彼らは脱落していた怖れもあっただろう。だからこの場合、事前に各々の役割が受験者に説明され、その上で彼らが自分たちに適した役割を選ぶという構成の方が、偶然性を排除できた気がする。しかしページ数やインパクト重視の演出の都合上、そうはしなかったのだろう。
 また、宇宙という広大な場所で繰り広げられる物語なので、背景は細かいにしても、人物はもっと太い線で力強く表現して欲しいという個人的な望みもある。特に本誌で読むと、線が細すぎて読みづらいことも多い。繊細さとダイナミックさの両面をバランスよく使い分けてもらえたら、もっと嬉しいと思う。

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