南Q太作品の書評/レビュー

ひらけ駒! (8)

頂は人それぞれ違う
評価:☆☆☆☆☆
 菊池宝はアマ四段となり、研修会へ入った。日々、将棋に取り組むものの、上に行けば上に行くほど強い人が次々と現れ、いつまでもきりがない。そして周囲は進学の時期を迎え始め、自分より将棋が強い人も将棋に見切りをつけて新たな進路に進み始める。それを見送る宝には、ある覚悟ができてきた。
 将棋の世界は、そんなトップを目指す人たちばかりではない。アマ初段を遠い頂として仰ぎみる、将棋愛好家たちもたくさんいるのだ。入品を目指し、大好きな将棋を指し続ける少年や、それを見守るおじさんに、将棋の神はほほ笑むのか?

 いろんな立場から将棋に関わる人たちが登場します。

ひらけ駒! (7)

女同士の熱い戦い
評価:☆☆☆☆☆
 壇レイ子女流二段が出場するマイナビ女子オープンの予選を観戦に来た菊池宝の母は、その息詰まるほどの戦い振りに感銘を受ける。将棋を仕事と言い切る者、人生の怨念をぶつける者、定跡にこだわらずに自分の将棋を指そうとする者、いずれにも共通するのは、彼女たちには将棋がない世界はあり得ないと言うことだろう。

 一方、研修会入会をする菊池宝は、奨励会入会という将来も延長線上に見据え、少しずつ将棋道を進んでいた。
 だがそれは、これまで同じくらいの場所で将棋を指していた仲間にも影響を及ぼさざるを得ない。友達が急に遠くに行ったような気がしてしまったとき、どうやって元の位置を取り戻そうとするか。将棋好きな小学生の葛藤も描かれる。

ひらけ駒! (6)

女流棋士それぞれ
評価:☆☆☆☆☆
 菊池宝の母は、水嶋奨励会三段が三段リーグに専念するため講師を辞めた後、壇レイ子女流二段に教わることになった。見た目は大人しそうな美人で、将棋をするようなイメージではない彼女だが、やはりそこは勝負師!見た目とは裏腹な将棋を指す彼女と知り合うことで、女流棋界の内情を少しずつ知っていく。
 一方、三段となった菊池宝は、母が壇レイ子女流二段に教わっているのをうらやましく思いつつ、順調に勝ち星を積み上げていた。そして強くなってきたという実感を得た少年が望むのは…。

 今巻は女流棋士たちにスポットライトが当てられる。将棋の実力は男性棋士から格段に劣るが、見た目だけで客を呼べるマスコット的存在。アマのおじさんたちからもそんな風に見下され気味の彼女たちの、将棋にかける情熱と凄さが描かれる。
 勝敗と言う形で明確に優劣が示される将棋は、才能を持った人々の間に、自然、才能の上下をつけることになってしまう。それはかなり厳しくて辛いこと。でもゆえに、そこで踏ん張っていられる人は、例外なく凄いのだ。

ひらけ駒! (5)

負けたくないから強くなる
評価:☆☆☆☆☆
 奨励会三段の水島先生の引率で、将棋教室対抗戦の団体戦に主将として参加することになった菊池宝。しかし、友人の涼と共に参加するクラスは、四段・五段がひしめく最強クラス。本来ならば宝は手合い違いなのだが、出場団体数の関係でエントリーされてしまったのだ。
 同じく水島先生が引率する初級者のクラスには、4歳で将棋のルールをマスターしたタクくんが参戦。お母さんが将棋を教えていたらいつの間にか覚えてしまったらしい。流石に勝負をすれば勝てないのだが、砂が水を吸収するように技術を盗み、様々な戦法を再発見していく。

 強くなるには強い人と指すしかない。だからこそ得るものがあるわけだが、当然それは、泣くほど悔しい、将棋に負けるという経験に直結するわけでもある。それでも指し続けられ人だけが、将棋に強くなれるのだろう。

ひらけ駒! (4)

遠征で勝負!
評価:☆☆☆☆☆
 三段に昇段した菊池宝だが、最近ちょっと元気がない。負けが込んでいるからだ。それを見た母は宝に遠征を申し渡し、将棋大会での優勝を命じる。
 そしてやって来た千葉の将棋道場で行われる、三段以下の将棋トーナメント。初戦を無難に突破した宝は、三段との手合いを次々つけられる。その中には、宝の知らない定跡で対抗してくる人もいるのだが…。一方、母の方も期せずして団体戦のリベンジマッチをすることになっていた。

 ある程度強くなると、負けることが怖くなって来る。ようやく手に入れた自分の格を失うことを恐れる様になるのかもしれない。でも、持たざるものの無謀さが強みになることもある。根拠のない地震に根拠をつけるため、ただ指し続けるのだ。
 ところで、大塚大樹に妙に懐かれちゃってるな。

ひらけ駒! (3)

弱くても熱い戦い<
評価:☆☆☆☆☆
 将棋団体戦に出場した菊池宝の母は、本人も意外なことに二連勝を果たす。大駒一枚強くなったとか大口を叩いて水島先生に一刀両断されながらも、初めての勝利の余韻をかみしめる。しかしそれが、彼女の敗着だった…?
 一方、三段昇段を果たした宝だったが、スランプに突入?負けが込み、本人にも自信がなくなってきてしまう。このスランプ、脱出できるか?

 周囲の子供たちが野球やサッカーというメジャースポーツをやる中、将棋に全てを注ぎ込む宝。そんな彼を見守る人、不思議に思いつつも惹かれる人、色んな人がいて宝がいる。

ひらけ駒! (2)

勝てるようになれば、逆に苦しみも深くなる
評価:☆☆☆☆☆
 勝負をするのは、楽しくて、つらい。勝てばうれしいけれど、負ければ悔しい。しかし悔しさがあるからこそ、強くなるために頑張れる。無駄なものなんてない。そうして夢中になれば、同じ様に将棋に夢中になる、色んな人と出会えるようになる。
 そしてそれに付き添う菊池宝のお母さんも、段々と将棋に引き込まれるようになってきた。宝の将棋を見ては一喜一憂し、ライバル意識の薄い宝の代わりの様に、将棋教室に通う子どもをライバル視する。ついには、お母さんも将棋大会に参加することに…。初心者の将棋対決の結果や如何に?

 全てのことに喜びを見出し、そしてそれゆえにより深く将棋の世界にのめり込んでいく少年の姿と、その姿を見ることで、我がことの様に緊張し、喜ぶ母親の姿が描かれる。

ひらけ駒! (1)

将棋を支える人々
評価:☆☆☆☆☆
 菊池宝は将棋に夢中な小学四年生。将棋道場に通ったり、将棋スクールに通ったり、子供将棋大会に出場したりして、日々強くなっている。それに付き合う母も、将棋界の事情に段々詳しくなってきて、宝の成長を穏やかに見つめるようになる。
 将棋マンガはプロ棋士の登竜門である奨励会を舞台に繰り広げられることが多いけれど、これはその裾野を支える将棋道場に通う少年が主人公だ。ここを抜け出した人々がプロへの道を歩み出す訳だし、指導者として次代のプロ候補生を育てる人になる場合もある。

 若いお母さん視点から将棋界を見ることもあるので、イケメン棋士を取り上げたり、お姉さんに憧れる少年の視点から、美人女流棋士を取り上げたり、純粋に将棋だけでない将棋界の側面にクローズアップしているとも言える。
 高橋和女流三段と「聖の青春」というところで、大体誰に取材したか分かりそうな感じ。

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