矢沢あい作品の書評/レビュー
Nana (21)
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内容はほとんど一文で表現できる。レンが死んだ。
もしここでレンが死ななかったとすると、いずれドラッグ中毒であることがすっぱ抜かれて、トラネスは落ちぶれて華やかな舞台から追放されることになったかもしれない。そういう緩慢な滅びではなく、劇的な終幕を迎えるための、演出的な死だった気がする。
現代視点から過去の死を描くと、どうしても記憶や悲しみは風化しているので、その瞬間のつらさが表現しきれない気がする。そういう意味でも、この巻で描かれていたことは、上述の一文に帰着してしまうのだ。
Nana (16)
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それまで自分の周りに集まっていたはずのものが、一つとのつながりを強くした結果によって、他のものが薄れていく。いつまでもそばにいてくれると思っていたのに…。無意識の甘えは、かつて捨てられたという寂しさに起因するのかもしれない。
メジャーになるということ。お金がからめば、それに関わる人も増え、自分たちの意向だけで進めることは無理になってしまう。なぜなら、売れなければいけないから。そしてその変化は、周りの人にも変化をもたらしてしまう。昔のファンがいなくなったり、好きになれない人が近づいてきたり、誰かを増長させたり。
破綻へのカウントダウンの音が聞こえる。そんな気がした。
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