柳沼行作品の書評/レビュー
ふたつのスピカ (16)
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一度の成功は、現在と未来をつなぐ架け橋。新生・獅子号の成功は、日本の宇宙開発と、そして宇宙学校の有用性を確かに示した。それは、これからも宇宙学校の生徒に宇宙へ行くチャンスが与えられるということ。
たとえみんなが宇宙へいけないとしても、それぞれの思いは何らかの形で宇宙へと向かっていく。
ふたつのスピカ (15)
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列車事故に巻き込まれてしまった府中野新之助は、朦朧とした意識の中で誰かの声を聞く。彼を励ますその声の人物とは…。そしてなぜ彼にもその声が聞こえたのか?
いよいよ、宇宙学校の卒業式が近づいてきた。それはすなわち、宇宙に行ける者と行けない者の線引きがされる日が近づいてきたということ。そして行けない者は、今後何を目標にして長い人生を生きていけば良いのか?新たな選択の時が迫っている。
ふたつのスピカ (14)
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4年時進級を駆けた最後の訓練合宿。メニュー的にはいつもの訓練内容の総まとめといった印象だが、睡眠時間は徐々に減らされ、体力的にだけではなく、精神的にもどんどんと追い詰められていく。
そしてそのつらい訓練が終わったと思われた時、彼らに告げられる言葉は…。
ふたつのスピカ (13)
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鈴木秋は宇宙への想いを残して死んでしまった。宇喜多万里香と同じ遺伝病の悪化によって。残された想いを引き継ぐ4人の仲間たちの取る行動は様々だ。しかしそれは一点へと収束していく。
一方、宇喜多万里香の父・千里に疑惑を抱いたフリーライター・山路森は、ライオンさんの生前の友人で新聞記者・伊地村のもとにクローン疑惑の調査資料を持ちこんでくる。社会正義のために公開すべきと主張する山路に対し、以前、宇宙学校の訓練風景を取材した伊地村はそう簡単に割り切れない。
彼らの出す結論は…?
ふたつのスピカ (12)
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5人で過ごす夏休み。今年も行き先は唯ヶ浜だ。生まれた時も場所もバラバラな5人が宇宙学校で巡り合い、そしてまたいつか帰ってくる場所。それはほんのささやかな願い。
宇宙飛行士コースは4年制だが、4年目に残れる生徒はほんのわずか。残れない生徒にとっては、今年が最後の夏休みだ。思い残すことが内容に一生懸命遊び、悩み、そして生きていく。それぞれ違う人間ではあるけれど、もし同じ景色を感じることが出来るのならば、それに勝ることはきっとない。
ふたつのスピカ (11)
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鴨川アスミのもとにやって来た柴田かさね。彼女は獅子号事故の被害者であり、遺族であり、そしてアスミの友人でもある。母親の過保護のせいもあって、全てを獅子号のせいにして逃げ道を探すことが当たり前になってしまった彼女は、新しい自分を見つけるためにアスミの許にやって来たのだ。
一方、宇喜多万里香の周囲には、事件記者の影がちらつき始める。彼は生前のライオンさんの友人だったらしい。そして、ひとつ前の万里香のことを見たこともある。そんな彼は、訓練に明け暮れる彼女の姿に何を見るのか?
ひとつの目標に向かってまい進する、ライバルであり親友でもある少年少女たちの、日々の積み重ねの物語。
ふたつのスピカ (10)
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最終選考に残り、父親が衆議院議員だということも相まって、一躍、世間の注目を集めることになる鈴木秋。しかし明るく輝くところには、より深く影も濃くなる。妬みや嫉みの対象になりやすいのだ。しかもそれとは関係なく、鈴木秋の身体にも異変が生じ始める。それは宇喜多万里香にも無関係ではないような…。
そして宇宙高校に戻ってくる佐野が携えてくる、獅子号事故に隠された真相とは…。過去を乗り越え、未来を目指す大人たちの物語も楽しめる。
ふたつのスピカ (9)
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鴨川アスミの思い出にある少年とそっくりの、ひまわり園の少年・桐生。彼はアスミの姿を見て、自分の夢を海外ボランティアに見出した。しかしそれは必然的に、ふたりの別れの時を意味する。彼の出発の日は、奇しくも定期試験の日だ。見送りに行くことはできない。
悶々とした気持ちを抱えたまま、暗い顔をして試験に臨むアスミを見て、府中野新之介は英語の試験中にもかかわらず、立ち上がって叫び、アスミに行動を促す。その結果は…。
そして、鈴木秋にも転機が訪れる。宇宙学校から推薦を受けた、宇宙飛行士選抜試験を受験するため、父親の承諾書を取りに行く。紆余曲折を経た末、彼が悟る本当の想いとは…。
こんな希望と夢に満ち溢れた物語の中にも、かすかな暗雲が立ち込め始める。
ふたつのスピカ (8)
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次の課題は監獄からの脱出。しかしこの課題のおかげで、アスミは約束を破りそうになってしまう。破らないためには早く脱出するしかない。アスミたちは知恵を絞るのだった。
宇宙を目指す少年少女の青春の物語。恋に、家庭の事情に、突然訪れたチャンスに、それぞれが揺れ迷いながら、自分の道を進んでいきます。
ふたつのスピカ (7)
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夏休み、みんなで遊びにやって来た、アスミの故郷である唯ヶ浜。そこは獅子号事故の現場であり、マリカにとっても深いつながりのある場所。彼女とライオンさんの関係とは一体…?
一方、鴨川トモロウの前には、かつての同僚にしてアスミの講師だった佐野が現れる。彼の目的は何か?
そして訓練も過酷さを増していく。それにつれて彼らの結束も強くなっていくわけではあるが。
ふたつのスピカ (6)
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ロケットが不時着して遭難した状況を想定して実施された、サバイバル訓練。しかし鴨川アスミの遭難キットには方位磁石も入っておらず、現在地の把握にすら困難を極めた。その道中で見つけた、血の手形がついた脱出カプセル…その持ち主とは?
鈴木秋の決意、マリカの事情など、徐々に明らかになってくる。
ふたつのスピカ (5)
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おとめ座α星スピカは連星だ。主星と伴星が互いに引力で引き合い、互いの周りをまわっている星だ。その回転の中心には何もない。何もないのだが、それらは決して離れ離れになることはない。
これは人間の関係に似ていないだろうか。友情にしろ愛情にしろ、二人、若しくはもっと多くの人々の間に、形となるかにかがあるわけではない。しかしその見えない何かが人と人を強く結び付け、離れがたくしている。
そしてこのスピカ、見た目は主星と伴星、ふたつの星なのだが、実は主星は4つの星から構成されていることが分かっているらしい。いずれも離れがたく結びついている5つの星であるわけだが、その距離には実は微妙な開きがあったりするわけだ。
もしこの作品が実際のスピカになぞらえてあるのだとしたら、主人公たちの誰がどれなのかを考えてみても良いかもしれない。回転の中心の何もないところにいるのがライオンさんということは、ほぼ自明だと思うんだけどね。
ふたつのスピカ (4)
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宇宙飛行士としての訓練も徐々に本格化してきた。そんなアスミの住むかもめ寮に新たな入寮者がやってくる。
一方、アスミの父親とアスミの確執も表面化してくる。その原因には、獅子号事件と同じ日に起きた何かが関わっているらしいのだが…。
大きな夢は時に他人に理解されない時もある。その他人が身内ならば、それは不幸なことかもしれない。しかし、いつまでも理解されないということはないかもしれない。時間が経てば…、あるいは何かきっかけがあれば…、その時が来るのを信じて、自分の道を貫くしかない。
ふたつのスピカ (3)
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未来は過去の上に築かれるものであって、過去は未来を縛るものではない。鴨川アスミとライオンさんは、過去を乗り越えて再び唯ヶ浜を離れ東京へと向かう。これが新しいスタートだ。そして東京には、そんな彼らを信じ待っていてくれる仲間たちがいる。
そして、アスミを追いこんだ佐野先生にも転機が迫っていた。やがて真相の一端を見せ始める、獅子号事件の真実。あの事件は何が引き起こしたものだったのか?
ふたつのスピカ (2)
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難関を突破し、父親である鴨川トモロウの応援も得ることができ、鴨川アスミは希望通り国立東京宇宙学校への入学を果たした。試験で一緒だった近江圭や宇喜多万里香、府中野、鈴木秋も一緒だ。おかげで、ただひとり東京に来て寂しさを友とするだけかと思われたアスミにも仲間が出来た。
しかし良いことばかりではない。宇宙物理学の講師である佐野は、初対面であるはずのアスミに対し、何故か敵意を向けて来る。その理由はアスミの父親にあるらしいのだが…。
獅子号事故という多大な犠牲の上に継続される、宇宙開発計画、そしてアスミたちの通う宇宙学校。あの事件は、ただ無心に宇宙への夢だけを追っていた大人たちを歪め、様々な形での負の遺産を残してしまった。
しかしその遺産が未来への道を閉ざすことがあっても良いのか?重い問いかけがなされることになる。
ふたつのスピカ (1)
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最近、週刊少年ジャンプで「ST&RS-スターズ-」という、宇宙飛行士を目指す少年ものが始まり、その第一印象がこの作品に似ているな、というものだったので、読んでみた。
日本の有人宇宙飛行計画は、有人ロケット・獅子号の市街地への落下という事故により、著しい遅れを被ることとなった。それから14年、獅子号事故で母親を失った鴨川あすみは、宇宙飛行士を目指して宇宙学校を受験する。それは、幼少の頃からの夢であり、約束。
しかし入学には高額の入学金が必要で、事情により日雇の様な仕事をしているあすみの父には簡単に出せる額ではない。彼女が諦めようとした時…。
そして宇宙学校の入学試験。それは筆記や面接だけでなく、閉鎖環境における適応試験まで含めた実践的なもの。近江圭、宇喜多万里香と同室で試験を受けることになったものの、初めてあったもの同士でなかなか呼吸が合わない。ついにそれが破綻しようとした時…。
ちょっとファンタジーっぽいところもありつつ、真剣に宇宙を目指す少女の物語です。
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