青柳碧人作品の書評/レビュー

希土類少女

生きたレアメタル工場
評価:☆☆☆★★
 ある時、レアメタルを生成する少女たちが一部で現れるようになった。資源に乏しい日本政府は独立行政法人・日本レアメタル機構を設立し、レアメタルを生成する少女たちの報告を義務付けさせ、強制的にコミュニティ・マヒトツ(アメノマヒトツノミコトから命名)に移住させる政策を取った。そんな彼女たちは、遅くとも25歳までには死亡する。
 そんな施設の職員である高松は、若手官僚の江波高明を指導することになる。そして、少女たちのリーダー的存在だった奈緒子が死亡後、冴矢らを中心として発生する変化に対応を迫られることになるのだった。

ヘンたて 2: サンタクロースは煙突を使わない

上手くいかない人間関係
評価:☆☆☆☆★
 幹館大学に入学した中川亜可美は、変な建物を見学するサークルであるヘンたてに加入した。そこで同じ一年生の伊倉星加や鈴木善文と知り合い、鈴木善文と付き合うことになった。
 水槽だらけの迷宮に遺された謎を解き明かした後は、七回生の上梨田誠士郎から頼まれ、中川亜可美は就職活動の手伝いをすることになる。それは、パターゴルフのキャディだった。

 幹事長が左門玲助から縁側沙羅に引き継がれ、新ヘンたてとして始動する中、鰺村弘志の運転でやってきた村には、卵での街おこしを企画する、18歳のドS女子がいた。
 そして、初のフルメンバーがそろうクリスマスイベントには、四年生の紋郷優作、仙田青理、槍佑人の3人組が参加する。

浜村渚の計算ノート 4さつめ 方程式は歌声に乗って

受け継がれる意思
評価:☆☆☆☆★
 キューティー・オイラーこと皆藤ちなみに気に入られた警視庁刑事の武藤龍之介と女子中学生の浜村渚は、数学テロ組織黒い三角定規から直接挑戦を受ける存在になってしまった。
 モンキィ・ホールには命をかけたクイズに参加させられ、千羽鶴しずえは人が殺せる折り紙で現状を生み出した教育者を襲う。大山あずさのお見舞いに出かけた病院では、入院患者の連続殺人事件を解決する羽目になるのだった。

 そして、ドクター・ピタゴラスに起きた予想外の事態に、黒い三角定規はこれまでと違った姿を見せることになる。

浜村渚の計算ノート 3と1/2さつめ ふえるま島の最終定理

ホテルに遺された思い
評価:☆☆☆☆☆
 キューティー・オイラーこと皆藤ちなみを追いかけて瀬戸内海へとやってきた武藤龍之介と大山あずさの警視庁刑事、そして女子中学生の浜村渚は、岡山県警の寺森昭伸により、本来の目的地とは違う、増留間島のホテル・ド・フェルマーへと連れて行かれてしまう。寺森昭伸は、自分が入れ込んでいたキャバ嬢の今西優奈の死の謎を解かせるため、彼らを私情で誘いこんだのだ。
 ホテル・ド・フェルマーは数学好きの法律家であった塩沢達也が建てたリゾートホテルであり、今は故人の遺志を継いで、パスカルと名乗る男性が支配人を務めている。そしてそこに勤める人々は、いずれも数学に造詣が深い。浜村渚は大喜びだ。

 浜村渚が数学に耽溺しているのをみながら、武藤龍之介は仕方なく密室殺人の謎に挑み始める。そして、このホテルには、かつてのオーナーの遺産が眠っているという事実も知ることになるのだった。

 シリーズ初長編。密室トリックよりも、遺産の謎の方がドキドキする。しっかりと伏線が効いていて、良質なミステリーに仕上がっているように思う。

浜村渚の計算ノート 3さつめ 水色コンパスと恋する幾何学

司会者の登場
評価:☆☆☆☆★
 日本の理系教育軽視を嘆いた数学者の高木源一郎は、ドクター・ピタゴラスを名乗り、テロ組織「黒い三角定規」を立ち上げた。その思想に共感した数学愛好者たちは、数学を利用した犯罪を引き起こし、政府に数学復権を迫る。彼らに敢然と立ち向かうことになってしまったのが、とろんとした目をする可愛らしい女子中学生の浜村渚だった。
 新たに加わったIT担当の錦部春美が走らせてしまったウイルスを除去するためにクレタ島を舞台としたゲームに挑んだり、友達の長谷川千夏のエピソードと絡めて、人と人との距離を三角関数で表したり、キューティー・オイラーこと皆藤ちなみを追いかけて函館へ向かう電車の中で武藤龍之介と浜村渚が出会った婦人の音板江美から出される問題を考えたり、五稜郭を舞台に繰り広げられるテロを阻止したりする。

ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会

もう少しヘンたてを推したい
評価:☆☆☆☆★
 幹館大学に入学した中川亜可美は、喫茶店で左門玲助と相席したのを切っ掛けに、ヘンな建物研究会の会合に出席してみることにした。縁側沙羅という憧れの先輩がいる理由で参加した伊倉星加や、とある事情でヘンたてに興味を持った鈴木善文と共に、新歓イベントで出かけた温泉旅館で、扉がたくさんつけられたログハウスにまつわる謎を出題される。
 七回生の上梨田誠士郎や、東京大学から参加している鰺村弘志も加え、ヘンな建物にまつわる謎を解いていく。

 ネタ的には面白いのだけれど、ヘンたての紹介はもう少しイラストがあった方が分かりやすいかも知れない。レーベル的に色々と縛りがあるのかも知れないけれど…。ヘンな建物よりも、やはり謎解きがメインになっている気がするんだよな。

浜村渚の計算ノ-ト 2さつめ ふしぎの国の期末テスト

自然界にある不思議
評価:☆☆☆☆☆
 日本の理系教育軽視を嘆いた数学者の高木源一郎は、ドクター・ピタゴラスを名乗り、テロ組織「黒い三角定規」を立ち上げた。その思想に共感した数学愛好者たちは、数学を利用した犯罪を引き起こし、政府に数学復権を迫る。彼らに敢然と立ち向かうことになってしまったのが、とろんとした目をする可愛らしい女子中学生の浜村渚だった。
 今回、浜村渚が対峙することになるのは、ルービック王子やキューティー・オイラーなど、幹部級の人物たちだ。彼ら彼女らの仕掛けてくる犯罪を、友達の長谷川千夏からもらったシャープペンシルとノートで解き明かしていく。

 キューティー・オイラーの事件は、ルイス・キャロルの不思議の国のアリスへのオマージュともなっており、n進数の不思議な世界をこれでもかと表現している。一方、ルービック王子の事件では、渚の心理戦も見ることができよう。

浜村渚の計算ノート

頼みの綱は女子中学生
評価:☆☆☆☆★
 日本の理系教育軽視を嘆いた数学者の高木源一郎は、ドクター・ピタゴラスを名乗り、テロ組織「黒い三角定規」を立ち上げる。構成員は、彼の作った数学学習ソフトを利用した人間全員だ。そこに仕込まれた後催眠で、彼らは無自覚に犯罪を犯してしまう。テロ組織「黒い三角定規」の要求は、きちんとした理系教育を行うことだ。
 だが、日本政府は、理系教育が少年犯罪を助長するという主張に基づいて彼の要求を拒否し、ついには犯罪が実行されることになる。その犯罪は数学を利用した犯罪で、数学の素養がなければ防ぐことはできない。しかし、数学の素養がある人間はほぼ全員が高木源一郎のソフトを利用しており、潜在的な容疑者でもある。そこで警察庁が探偵候補として目を付けたのは、浜村渚、中学生の数学少女だった。

 まず設定が突拍子もなく面白い。そして繰り広げられる犯罪は、数学を含んでいる。四色問題に絡めて起きる殺人事件。「0」にまつわるエピソードで追い詰められていく犯人。フィボナッチ数列が指し示す容疑者。そして円周率の意味。数学の素養がない人間には意味不明に思われる連続犯罪を、ルールに基づいて解き明かしていく。
 ただ、数学ネタを混ぜ込んではいるものの、さほど深く理解しよう、させようという意思は見受けられない。あくまで彩りと理解すべきだろう。

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