清宮普美代作品の書評/レビュー

20代で身につけたい質問力

ビジネスは人間が行うものゆえに
評価:☆☆☆☆★
 質問力をキーワードに、ビジネスにおけるコミュニケーションの方法、そして自己形成の方法について解説した本。論理的思考に寄りがちなビジネスの現場に、感情寄りの質問という概念を持ち込むことによって、新たな視点の提供が可能だという主張にみえる。

 質問は、質問者が内容をある程度理解していないとできないし、質問を受けた側もそれに応える過程で理解を深め、新たな着想を得ることもできる。ゆえに、上手な質問を出来るようになることは、ビジネスにおける対人スキルを向上させる上で、とても重要だといえる。
 そしてこれは、他人に対してだけでなく、自分にも応用できる。自分が将来どうなりたくないか、あるいはどうなりたくないかということを、自分に対する質問というかたちで浮き彫りにしていき、それを意識下におくことで、具体的に何をすれば良いかを明らかに出来るという効果が見込めるのだ。

 また、感情寄りの質問というのは、会議の現場を紛糾させかねない響きを感じさせる。しかしここで感情寄りというのは、それによって自分や相手がどうなりたいかであるとか、どういうビジョンを持っているのかとか、事実や効果以外の視点で物事を見つめ直すということを意味している。
 これはビジネスが人間によって行われているということを考慮すると無視し得ない視点であり、機械的に処理できる部分は純粋に論理的思考で良いが、人間は論理的な動機だけでは動けないということを示唆している。

 個人的には、全ての内容を質問というキーワードで括るのはかなり無理があるなとか、会議における無意味な沈黙も存在する事実を考慮すると完全に同意できない部分もあったり、扉が多すぎるという印象も受けるけれど、意識しておくと役立ちそうな内容が書かれている。
 出版社の意向などもあるのだろうが、新書で出版されれば良かったのにとも思う。

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