ダン・セノール作品の書評/レビュー

アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?

ドラマはいらない
評価:☆☆☆★★
 個人的にビジネス書は、命題があり、それに対する仮説があり、仮説を検証する論理があり、それによって事実が残るという、シンプルな構成が望ましいと考えている。ビジネスにドラマを持ち込むと、本質がぼやけると思うからだ。しかし、アメリカのジャーナリストが書くビジネス書は、必ずそこにドラマを持ち込んでくる。本書もその例にもれない。

 本書の命題はタイトルそのままだ。そしてそれに対する仮説は、イスラエルには徴兵制と予備役制があり、若い頃に軍隊で選別された優秀な人材が、その自覚と裏付けを持って予備役としてビジネスの世界に飛び込むことで、スタートアップ企業が多く生まれるというものだ。
 その仮説を、いくつかのスタートアップの事例と、アメリカ社会との対比を通じて、検証していこうとしているのだが、やはり余分なドラマが多すぎて、読み物としては良いのかもしれないけれど、本質を考えるのにはあまり向かない気がして仕方がない。

 結局、強制力があるシステムにおいて全国民を選別し、そのシステムの中で優秀と認められた人間に裏付けを与え、その裏付けを信頼して社会がリソースを投入するという、異常な状況の仲だからこそ許されるシステムが、無理矢理に社会を活発化させているようにも見える。
 毎日カンフル剤を打たれ続けた社会が、暴発して隣家の民間人を爆撃するという暴虐に走ることも、これは副作用として仕方のない一面なのかもしれない。もちろん、それで殺される方は、たまったものではないが。

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