深沢真太郎作品の書評/レビュー

数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。

数学女子vs感覚系男子
評価:☆☆☆☆☆
 中堅アパレル企業「ブライトストーン」社長の佐野賢太郎は、自社の今後の成長に不安を抱いていた。現在のところ、ブランド「WIXY」が20~30代のOL向けに好評を博しており業績は好調だが、中堅社員に感覚でビジネスを展開している者が多く、この好調さがいつまで続くか読めない。
 そこで彼が思い出したのが、ビジネススクールで同席したことがある、数学科出身のコンサルタント柴崎智香だった。彼女は数的思考に長け、中小企業のビジネスも把握しており、他人に説明する経験も豊富だ。今後、自社ビジネスの中核となっていく営業部の木村斗真とも年齢が近く、彼の発奮材料となってくれることだろう。

 こうしてコンサルティング会社からアパレル企業の営業部へヘッドハンティングされた柴崎智香は愕然とします。部長を含めた営業部員たちが、表面的な数字を見ることしかせず、感覚と経験でビジネスの方針を決定していたのです。
 彼女はその現状を改めるべく、リーダーである木村斗真に対して数的思考とは何かを、ビジネスのあらゆる局面で分かりやすく言い聞かせつつ、彼の思考を変革していきます。

 ここで登場する数的思考は、ABテスト、標準偏差、相関係数、実数と割合など、基本的な事項です。ある販売戦略は他の販売戦略に比べて有効なのかを比較する、平均値からのばらつきの程度を把握する、ある商品と他の商品の連動性を考えるなど、具体的なケースに対して、数的思考をいかに利用するかが示されます。
 ここで紹介されるのは、考え方とエクセルの使い方くらいの、分かりやすいものです。数学が嫌いな人だけでなく、数学が得意だと思っている人でも、相手に分かりやすい説明とは何なのかを考える基準になるでしょう。

 ライトなビジネス書としては、かなりの良書です。個人的には、数的思考だけでなく、経営者の視点というものが少し分かった気がしました。先を見通して、自分が直接手を下すのではなく、それが出来る人材を必要な場所に配置する、あるいは示唆することで、自分の時間を使うことなく、自分が直接担当する以上の深さで問題を検討させるというような考え方です。

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