出口治明作品の書評/レビュー

生命保険入門

シンプルにすると誰にでも理解できるから、逆に専門家は困っちゃう
評価:☆☆☆☆★
 初版が2004年であるため、記述と現在の状況が少し変わってきている部分があるのかも知れないが、この本の中で挙げられている日本の生命保険業界の本質的な問題点は解消されていないため、未だ価値は薄れていない様に感じられる。
 生命保険の歴史から始まって、生命保険の収益構造、種類、生命保険会社の組織、資産運用方法など、外から見ていては全く理解できない生命保険会社の内部の仕組みについて、B/S,P/Lの読み方なども含めて、説明されている。

 初めのうちは、相当生命保険に興味がないと細かすぎてつまらない内容だな、と思っていたのだが、中盤に来ると面白くなってきた。特に、逆ざやの問題では、ずっと昔に貯蓄型の生命保険に加入した人の損失補てんのために、新規に加入した人の生命保険の配当分が投入されていることを知り、馬鹿馬鹿しさを覚えた。公的年金の問題でもそうだけれど、自分の力ではどうにもできない時間の問題のせいで、後に生まれた人が損をするような仕組みは、早急に解消する必要がある。そうでなければ、真面目に生きる気力をなくすよね?
 また、この逆ざやの問題を知ったことにより、近年、新興の生命保険会社が出てきている理由も理解できる気がしてきた。逆ざやは生保にとっては負債だから、伝統的な生保が負債にあえいでいる今だからこそ、新興勢力にとってはチャンスでもあるのだ、と。でも、逆にそれを利用して、伝統的生保が子分を使って利益を上げる、という構造も考えられるなあ。

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