天冥の標 (1) 上(小川一水)の書評/レビュー


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天冥の標 (1) メニー・メニー・シープ 上 天冥の標 (1) メニー・メニー・シープ 下

天冥の標 (1) メニー・メニー・シープ 上

与えられた条件の中で、人々は懸命に生き抜こうとする
評価:☆☆☆☆☆
 拡散時代を迎えた地球人類は、数多くの移民船を他の恒星系に向かって送り出した。多くの植民船は無事に植民星に到着し、そのテクノロジーを生かして繁栄し再び植民船を送り出すようになる。
 しかし、植民星メニー・メニー・シープに到着したシェパード号は、到着時のトラブルによりその能力を十全に生かすことができず、移民の技術レベルは20世紀のレベルまで落ち込んでしまう。現在西暦2803年。資源の少ない星で生活する人々は、施政者のある発案により、さらなる困難に陥ろうとしていた。

 最近は近未来のSFが多かったように思うが、今回は人類が銀河系全域を生活圏にしようかという時代。ただし、舞台となる惑星はあまり現代と変わらない。登場人物として、海の一統という改造された人類や、恋人たちと呼ばれるアンドロイド群、先住種である石工と呼ばれる昆虫様の生物などが出てくるが、彼らの行動は現代の状況に結びつかなくもない。
 わずか5千平方キロメートルの植民領域の中で、わずかなリソースの配分を巡って対立する人々。そこから飛び出して新天地を目指そうとする人々。闘って体制を変えようとする人々。そして、何をしたら良いか分からず戸惑う人々。様々な立場の人がいるが、ただ一つ明らかなことは、黙っていて助けてくれる存在はどこにもなく、問題は自分たちで解決しなければならないということだ。ただ、解決するとは言っても、立場により目指すべき場所は異なり、切り捨てられる範囲も異なるということがより深い問題であり、結局は放置するというのが安易な解決に陥りがちなのだが。

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