三匹のおっさん(有川浩)の書評/レビュー


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三匹のおっさん

諦めなんて知らない、自分たちで出来ることをする
評価:☆☆☆☆☆
 タイトルを見てあらすじを読んで、年配の人が現代社会の愚痴をこぼしたり上から目線で説教する内容かとも思ったのですが、その思い込みはちょっと違いましたね。三匹のおっさんは、身近な犯罪を見つけ出し快刀乱麻と断つ正義の味方なのですが、その前に被害者なり、何なり、相手の懐にスッと入り込んでいる。だから、部外者による断罪ではなく、身内からの救いの手なのです。それが傲慢さではなく、やさしい気持ちを感じさせる理由の気がします。

 昔は三匹の悪ガキと称された、還暦近くのおっさん三人組が、周囲のジジイ扱いを嫌い、本業の傍らご町内の自警団を結成します。剣道師範のキヨさん、柔道の猛者シゲさんという武闘派と、機械いじり大好き情報収集担当の頭脳派ノリさんという圧倒的な個性の三人組に加え、キヨさんの孫の祐希やノリさんの娘の早苗など高校生も登場します。
 ご家庭内の問題から、強盗・痴漢の撃退、中学校の動物虐待や催眠商法など、身近な人たちがかかわる事件を、時には圧倒的な武力で、時には情報戦で解決していきます。はじめはおっさんたちがメインなんだけれど、いつの間にやら祐希や早苗が舞台に躍り出て、いつものような有川ワールドが展開されたりもします。

 こういう問題って、若い世代が悪いとか、年配の世代が悪いとか、行政が悪いとか、誰かに責任を押し付けて、それで解決したような気分になってしまいがちです。でも、時代は変化していくものだし、変わったこと自体が悪い訳ではないのだから、限られた条件の中で解決策を模索していくしかないのです。
 このお話は、祖父世代もゆっくり変わるし、孫世代も少しずつ歩み寄る。物語だから都合の良い展開もあるけれど、理想にだけ流されることもない。そんなところが良いと思います。

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