星図詠のリーナ (1)(川口士)の書評/レビュー


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星図詠のリーナ

彼女の生きた証が地図に残る
評価:☆☆☆☆★
 知らない街の様子を知るには、数値化された情報と数値化できない情報が必要らしい。前者は街までの距離などだし、後者は風俗・習慣などだ。例えば古代ローマでは、この二つの情報を伝えるため、街々までの距離を示した地図と、名所や住民の特徴などを絵で記した地図の二種類があったらしい。当時のローマの人々は、一生訪れないかもしれない遥か彼方の様子を、その地図を眺めながら夢想していたのかも知れない。

 この物語の主人公であるリーナは大陸最大の王国の王女殿下であり、普通であれば王城の中にあって夢想する側の人間であろう。しかし彼女が普通と少し違うのは、母親の影響で測量と作図が出来ること。そして彼女が手慰みに作る地図は、それぞれの場所で見たもの、出会った人を描いた、思い出の縮図でもある。この趣味が高じて一流の技術を身につけたリーナは、父王の勅命を受け、とある港町の地図作成を命じられ、何故か水戸黄門の時代劇の様な役割を果たすことになってしまう。
 侍女のサラや、旅の途中で出会った傭兵のダールなどと繰り広げられる、ファンタジーな冒険譚。彼女の持つ白紙の世界地図は、これから思い出の記録で埋まっていくのだろうか。

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