サクラダリセット (7) BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA(河野裕)の書評/レビュー


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サクラダリセット (6) BOY、GIRL and ‐‐ サクラダリセット (7) BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA 完結

サクラダリセット (7) BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA

選んだ先にしか未来はない
評価:☆☆☆☆☆
 管理局対策室室長の浦地正宗の両親は、咲良田の能力を管理するために、当時少年だった加賀谷の能力によって礎となった。ゆえに能力を忌避する浦地は、岡絵里の能力によって未来視の相麻菫に能力の使い方を忘れさせ、宇川沙々音に能力の暴走を演出させ、管理局に咲良田中の能力者に能力の存在を忘れさせるという最終手段を了承させることに成功した。
 しかし、その未来には、浅井恵のそばに春埼美空の姿はなく、代わりに明るく快活な相麻菫がいた。記憶を失うことのないケイのそばに、リセット能力を持つ春埼を置くことを浦地が嫌ったのだ。

 春埼美空を取り戻すために元通りの世界にすると言うことは、自分がスワンプマンではないかと苦しむ相麻菫に戻すと言うことでもある。だがそれでも、ケイは自分のために、咲良田に能力を取り戻そうと決意する。
 能力をコピーする坂上央介や声を届ける中野智樹、対象を消し去る村瀬陽香や猫と意思疎通ができる野ノ尾盛夏らの能力を組み合わせ、そして敵方の人物すら取り込むことで、より理想的な世界を作り出そうとするケイ。だがそのためには、彼自身の意思で、再び相麻菫を傷つけなければならない。誰よりもケイのために生きた彼女を再び傷つけることでしか成し遂げられない未来。それなのにその未来で、ケイは彼女が本当に望むことを与えることすら出来ないのだ。それはどんなに残酷なことだろう。

 だがやはり、人の感情を無視することは出来ないし、思い通りの未来が手に入るわけでもない。より理想に近い形を求めて努力し続け、少しでも犠牲を減らそうとすることが、人間に許された限界なのかもしれない。そのためには、自分を傷つけることすらためらわず突き進むのがヒーローの姿なのだと思う。
 そんなヒーローの導く未来は、どこか切なく、しかし生きる意味のある世界だ。シリーズ堂々の完結。

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