サクラダリセット (6) BOY、GIRL and ‐‐(河野裕)の書評/レビュー


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サクラダリセット (6) BOY、GIRL and ‐‐

40年の思いをリセットする決意
評価:☆☆☆☆☆
 二年前に死んだ相麻菫を能力を組み合わせて黄泉帰らせたことで、春埼美空は恐怖を感じてしまった。それは、浅井ケイが自分を、自分の能力であるリセットを必要としなくなるのではないかという恐怖。世界を3日分巻き戻すという能力よりも、相麻の未来視能力の方が使い勝手が良いはずだからだ。
 その鬱屈した思いは、文化祭で彼女が演じる女性と、皆実未来が脚本で書いた人物像を乖離させてしまう。ケイの恋人役を幸せに演じるには、脳裏に浮かぶ相麻の姿が強烈すぎるのだ。そんなすれ違いを感じた皆実未来と中野智樹は、友人である浅井ケイに奮起を促すため、ある仕掛けを施す。

 一方、二代目魔女を名乗る、生き返った相麻菫は、管理局対策室室長の浦地正宗との会合を控えていた。浦地は咲良田から能力を消し去るために策を巡らし、二代目魔女はそれに協力をしているかのように見える。
 だが、浅井ケイには、相麻菫から、浦地の陰謀をはねのけるためのヒントが届いていた。果たして彼女は何を思って行動しているのか?

 タイトルの後半は7巻に続くらしい。それでこの物語も完結の予定だ。

 浅井ケイと春埼美空。能力を持ち、いつも隣にいるけれど、感情が希薄で、何を考えているかは単にから読み取りづらい。でも彼らも普通の高校生でもある。何かがあるから普通の高校生でいられないのではなく、普通の高校生でもありながら何かがあるという形に落ち着くべきだ。そんな誰かの思いが支えるかのように、物語は進展していく。

 浦地の作戦は万全だ。あらゆる反撃を封じるため、管理局の立場を生かし、能力の裏をかき、あるいは表から対処し、自分の目的まで一直線のルートを敷く。それには魔女の未来視も叶わない様に見える。
 しかしそうではなかった。逆転の一手を打つため、魔女は大きな犠牲を払いつつ、自分の何かを切り捨てて、路を残した。それは隘路ではあるが、死路ではない。その路を進んだ先に、彼らは、彼女たちは、何を手に入れるのだろう。

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