神様のメモ帳 (7)
- 絆のかたち
- 評価:☆☆☆☆☆
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勤労感謝の日。それはニートへの怨嗟が街に溢れる日であり、ニートたちは自分の部屋に閉じこもり、ユダヤの安息日のごとく、何もせずに過ごす。その日が過ぎれば、ニートにとっての新年が明けるのだ。
そんな冬のある日、平坂組騒動のときに関わったバンドの人の依頼で、藤島鳴海はまたもや芸能人の依頼を受けることになった。そうして現れた夏月ユイ、本名を桂木結菜という少女は、ホームレスの男が、昔いなくなった父親かも知れないという。奇遇なことに、その人はテツ先輩の知り合いのギンジという男だった。
借金があり工場が火の車だったという理由はあったのかもしれないが、妻と娘を捨てて愛知から東京へとやって来た桂木健司。もし仮にギンジがそうだったとしても、簡単に娘に会えるはずもない。しかし、父親と会って話をしたいという依頼を受けたアリスは、生者の問題ゆえにその解決を鳴海に委ねる。
だが、その父娘の問題と同時に、ギンジたちホームレスたちが暮らす公園で、再開発による立ち退き要請と、改造モデルガンによるホームレス襲撃事件という、またもや別の問題が重なってきた。加えて、校舎の問題については、少佐こと向井均に心当たりがあるらしい。
ニート探偵団を一時抜け、独自にホームレス襲撃事件の調査を進める少佐と、父娘の問題に取り組む鳴海。彼は少佐に関わろうとするが、少佐の強い拒絶で関わることができない。テツやヒロ、四代目やアリスたちも、少佐の意志を尊重し、全く関わろうとはしない。
そうして日数が過ぎていくうち、少佐と鳴海の事件は、思いもよらないかたちで関わりあうことになる。
同じニート探偵団に属している仲間のはずなのに、それぞれ個人の事情には深く立ち入らないニートたち。元々全く他人なのに、ホームがないという事情を共有しているがゆえに、互いの意志を尊重しようとするホームレスたち。
ニートとホームレスは全く事情が違うし、背負っている重みも違うけれど、誰かに必要とされた時に手を差し伸べる気持ちは共通しているのかも知れない。それは彼らが互いの事情を知らないとしても、互いに置かれている環境を共有しているという意味で、つながっているからなのだろうか?
神様のメモ帳 (7)(杉井光)の書評/レビュー
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