ご主人様は山猫姫 (1) 辺境見習い英雄編(鷹見一幸)の書評/レビュー


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ご主人様は山猫姫 (1) 辺境見習い英雄編

山猫姫と紅い塩
評価:☆☆☆☆☆
 舞台設定でいうと、唐の時代くらいの社会基盤を持った世界。海に開けた延喜帝国と遊牧民族で構成されるシムールは、内陸の国境線をめぐり百年に亘って対立していた。しかし、月原弦斉という帝国の高級官吏が中央の政争に敗れ辺境に赴任してくると、シムールの一支族シャン族と和議を結ぶことに成功してしまう。彼の功績を嫉む中央政府は、支族の族長の娘を後宮に差し出すことを条件に和議を認めるとの決定をするが、月原はその条件も受諾させることに成功。しかし問題はその娘が「山猫」と称されるほどのクソガキであることにあった。
 その頃、中央の名門一族の出である泉野晴凛は、兄弟と違って落ちこぼれ扱いされることに悩んでいた。科挙には二度続けて落第、文官になるつもりだったので武芸の稽古もしておらず武官にはなれない。そんな彼に、千載一遇のチャンスとも呼べる、辺境での家庭教師の仕事が舞い込んできた。
 山猫姫とのファースト・コンタクトにも成功し、家庭教師の仕事にも慣れた頃、月原弦斉が中央の意向で解任され、新総督が赴任してくることになる。中央の意向で来る役人が月原の努力を無に帰すのは目に見えている。シャン族との友好関係を継続させるため、晴凛の家庭教師の職を守ろうと、新総督の人事権の及ばぬ官吏に推挙されたのは良かったのだが、新総督は彼を無役無録にして、山猫姫と共に野に放り出してしまう。
 その結果、帝国の官吏でありながら、シャン族の下で暮らすことになった晴凛だが、新総督の手により急変していく事態は一人の手には止められず、再び戦乱の火蓋が切って落とされることに。その時、晴凛がとる行動とは…。

 戦争を単なる兵力と兵力がぶつかる戦場としてとらえるのではなく、塩という戦略物資の供給源の確保という広い視点からとらえようとしている作品に見えます。でもそういう題材をそれだけでまじめに書くと面白みがなくなってしまうから、マイ・フェア・レディ的な要素など、キャラクター的に読者を引き付ける要素を付け加えて、エンターテインメント性を重視した作品にしようとしているみたい。
 意図通りに完成すると、作者の代表作になる予感がします。

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