図書館革命(有川浩)の書評/レビュー


 図書館革命(有川浩)の作品の書評/レビューを掲載しています。

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図書館革命

身近にある恐怖
評価:☆☆☆☆☆
 コメディータッチのミリタリー物(ただし恋愛を含む)。表面的にはこの様に表現される作品なのに、今回もサラッと重い話題を扱ってくれました。カウンターテロと個人の自由、一体どちらが優先されるべきか。本来は同じ次元で語られる性質の問題ではないけれど、現実の世界でも政治やマスコミにおける議論の俎上に乗せられる問題でもあります。
 突然発生する原発テロ。そのテキストにされたと目される、1冊の本。この本の作者に自由な表現活動を許しておいて良いのか。再び著作がテロリストのテキストに使われるのではないか。漠然とした恐怖に脅える世論は、著者に対する表現の自由の制限を黙認しようとしてしまいます。ここで登場するのが我らが図書隊。図書館の自由法を楯に、著者の表現の自由を守ろうとするわけですが…
 しかしこの話題。軽く扱っているように見せていますが、本当に重い。カウンターテロや環境保護といった、誰もが逆らうことができないお題目をかざして人々を思考停止に追い込んでしまい、本来は必要のない制限までも加えてしまうという手法は本当に行われていることだから、面白いストーリーなのに、スッと背筋が寒くなる瞬間があります。
 無関心ほど最悪の結果を招くものはないし、正義という名の凶器ほど破壊力の大きなものはないということですね。

 最終巻だけあって、色々なものに決着がついていきます。あの人とあの人とか、はたまた、あの人とあの人が!という人間関係であったり、検閲のあり方であったり。でも一番かっこいいのは、やっぱり稲嶺顧問だと思います。この人が舞台の裏側でどんな動きをしていたのか、ちょっと知りたいなあ。

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