桜坂洋作品の書評/レビュー

項目 内容
氏名 桜坂 洋 (さくらざか ひろし)
主要な著作

 桜坂洋さんの作品の書評/レビューを掲載しています。

よくわかる現代魔法 (6)

懐かしの面子が再始動
評価:☆☆☆★★
 お久しぶりの新作。なので、ちょっとストーリーを振り返ってみる。

 何のとりえもないと思っている森下こよみが魔法学校のチラシを見つけ、自分を買えるために入学してみようと思い立つ。向かった先の洋館には、姉原美鎖というお姉さんと弟の聡史郎が住んでいた。
 美鎖はコンピューターやネットワークを利用してコードを実行するという現代魔法の第一人者。彼女に弟子入りして現代魔法を勉強するこよみだが、現代魔法の言語であるアセンブラはちんぷんかんぷんだし、実行した魔法は全て、たらいを召喚する魔法に変わってしまう。
 自らの肉体のみで魔法を実行する古典魔法の使い手、一ノ瀬弓子クリスティーナや、こよみのクラスメイトでプログラミングが得意な坂崎嘉穂を交えて、現代魔法が関わる数々の事件に関わっていく、というようなお話。

 今回の事件は、5巻で描かれた事件の直後から始まる。
 美鎖のところに送られてきた大量の通販商品の中に、異常なコードを持った段ボール箱があった。開けて見ると中には携帯電話が一つ。液晶には卵の映像が映っていて、それが割れると、炎をまとったキツネ(Firefox)の姿をしたデーモンが現れた。こよみになついたそれ、プーが側にいると、こよみは普通に魔法が使える。喜んだこよみはプーをとてもかわいがるのだが、それが後々大きな事件につながっていく。

 事件の大きさの割にはページ量が若干少なめの気がする。美鎖は病み上がりで精彩を欠いているし、弓子の派手な立ち回りも少なめだし、嘉穂の見せ場も作ってもらえないしで、盛り上がる前に事件が終結した感じ。
 まあ、今後の展開を担いそうな怪しい男も登場するので、何かが起こる前の準備運動と思っておけば良いのかも。いままでは単発のプログラムの話だったけれど、これからはその集合体であるシステムの話に移っていくのかもしれない。

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七つの黒い夢 (共著:乙一、恩田陸、北村薫、誉田哲也、西澤保彦、岩井志麻子)

黒いって何?
評価:☆☆☆★★
 桜坂洋「10月はSPAMで満ちている」は、「はじめての現代魔法」の嘉穂が登場する、ちょっとミステリー的要素を盛り込んだ物語。ストーリーの仕掛けを考えると、後者を読んだことがない人を対象に書いているのかもしれない。
 乙一「この子の絵は未完成」は、子供の頃に抱くちょっとした不思議を忘れずに、それを増幅して作り上げたような作品。教育って、ホント難しいですよ。
 誉田哲也「天使のレシート」は、最後がほんのちょっとだけ黒い。ほんのちょっぴり哲学的で、あれは著者の思想なのだろうか?
 誰か好きな作家がいれば、読んでも良いかも。

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よくわかる現代魔法 (5) たったひとつじゃない冴えたやりかた TMTOWTDI

見えた答えが正しいという確信はどこにあるのか
評価:☆☆☆☆☆
 姉原美鎖が消えた。残されたのはアミュレット一つ。受け取った嘉穂は彼女が使えるコードを実行する。それが望まれていることだと確信して。
 ホアンによって呼び出されたギパルテスは、最強の魔法をもたらすライブラリの始動を目論み、行動を開始する。精神的に追い詰められている弓子は果たして対応することができるのか。そして、こよみに課せられた役割とは…?
 またまた美鎖が思い切った決断をあまりにもあっさりとしています。自分すらも道具としてみなし切れてしまう心が最も恐ろしい。一時はどうなることやらという流れになりますが、こよみのこよみらしい、甘っちょろい決断によって収束を迎えます。
 一応、第一部完といった感じ。次はどんな話を展開してくれるのかな?

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よくわかる現代魔法 (4) jini使い

自分ができることを
評価:☆☆☆☆★
 物に宿る精霊jini。魔法とは最も縁遠そうなIT複合ビルで巻き起こる魔法戦。jini使いと、おっとテレポーターの再会は事態をどう変えるのか?そして、美鎖と弓子はどう動く?
 今回の主役は、どう考えても嘉穂でしょう。普段は地味に活躍しますが、今回は友達のために自分の命を張っています。冷静に見えるけれど、行動は結構アツイ!
 最後は意外な結末が…。一体次巻はどうなるんだ?

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よくわかる現代魔法―ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ

実戦経験値は訓練の何倍か?
評価:☆☆☆☆★
 今回のお話の主役は一ノ瀬弓子クリスティーナです。コンピュータにより実行される現代魔法全盛の現代において、なぜ弓子が古典魔法を習得することができたのか、その疑問が解消されます。
 美鎖がクリスマスショッパーのパスワードを忘れてしまったので、こよみが過去の記憶を覗き見するっていうストーリーなのですが、ただ見ているだけのはずなのに、何故か過去に干渉してしまっているような気が…。過去という概念についても考えさせられるかもしれません。
 個人的には、美鎖にべったりだった聡史郎がどの時点で変わってしまったのかが知りたかったなあ。

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よくわかる現代魔法―ガーベージコレクター

消さない記憶
評価:☆☆☆☆★
 忘れてしまいたい記憶。思い出すだけでもつらい。でも、そんな記憶も自分を構成するひとつの要素には違いない。そこから抜け出そうとしてあがくから、前に進むこともできると思う。
 早朝の渋谷の街。スプレー缶を携えた達彦は現代魔法使い美鎖に出会い、その言動に振り回される。一方、自称正義の古典魔法使い弓子は、渋谷の街に広がる不穏な気配を感じ取っていた。
 渋谷に展開される2つの魔法。ガーベージコレクターが全ての記憶を消去しようとする時、達彦は、美鎖は、弓子は、そしてこのみは何を思って行動するのか。
 今回の主役は美鎖です。自分に不利益をもたらすであろう決断にも、一瞬たりとて躊躇しません。世界観の構築に費やされた前回と違って、今回はそれぞれの行動の内側に焦点が当てられています。

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よくわかる現代魔法

機械仕掛けの神様
評価:☆☆☆☆★
 この世に魔法があるとしたら、魔法使いはどうやって魔法を使うんだろう?魔法の杖や呪文を使うにしても、本体は普通の人と変わらないはずだよね。体に意思を伝えるものは神経、そこに流れるのは電気信号。だとすれば、コンピューターの電子回路を流れる信号でも同じ現象を作れるのでは?コンピューターを使った現代魔法が存在する世界の物語。
 何をやってもドジばかり。森下こよみが見つけたのは魔法学校の入学案内。一生懸命がんばったけれど、使えた魔法はタライの召喚だけ…。変身もしなければ、攻撃もできない魔法少女の奮闘記です。
 たとえちっぽけな力だとしても、前に進んで努力することを忘れなければ、きっと状況を打開する道もあるはず。そんな勇気を感じさせてくれるかもしれません。

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スラムオンライン

そこにいる理由
評価:☆☆☆☆★
 きっと多くの人は生きる理由を求めている。自分探しというと笑われるかもしれないけれど、探しに行く先は必ずしも現実世界とは限らないのかもしれない。
 オンラインゲームで最強の格闘家を目指す少年。新宿の街で青い猫を探す少女。全く違うように見えるかもしれないが、自分の芯となる何かを求めていることには違いがない。それぞれの解答が提出されたとき、きっと世界というパズルの中に彼らのピースがぴったりとはまることだろう。
 色々と考えてゲームをしている人もいるんだろうなぁ、と考えさせられるかもしれない作品。

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ALL YOU NEED IS KILL

繰り返される悪夢
評価:☆☆☆☆☆
 意思疎通ができない異世界生物との戦闘。戦術なんていう華麗なものがない消耗戦の中、戦場に叩き込まれる初年兵。あえなく戦死…と思いきや、目が覚めると出撃前だった。
 作者の別作品、「よく分かる現代魔法」とはまったく別のテイスト。はじめは重過ぎる出だしに少し躊躇したが、読み進むに従って、その物語に引き込まれていった。
 なぜ彼は、彼女は同じ日を繰り返しているのか。その答えと共に物語りは収束する。上下分冊として、もう少し書き込んでも良かったのではないか。それだけの深さのある作品だと思います。

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